加藤晃央-株式会社モーフィング
加藤晃央氏(株式会社モーフィング代表取締役)
1983(昭和58)年7月、新田町生まれ。
実家に父母が在住。妹1人、弟1人。
豊洲小学校、相森中学校、須坂高等学校を経て武蔵野美術大学を卒業。
大学在学中(4年生)に株式会社モーフィングを設立(2006.11)代表取締役となる。
★株式会社モーフィング http://www.m-inc.jp/
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Q 株式会社モーフィングは美大生をターゲットとしたフリーペーパーなどのメディア運営やイベント、コンテストの運営、就職支援などを行っていますが、中でも私はクライアントの要望に応える制作受注について興味深く感じています。美大生と実社会と繋ぐことが使命ということでしょうか。
A はい。モーフィングというのは映像の世界で、ある形状から別の形状へ変化していく様子を表現するために、その中間を補う技術のことです。クリエイターと社会を繋ぐため、素晴らしい絵画やデザインを届けるため、様々な点と点との繋ぎ役、それが株式会社モーフィングなんです。
Q しかし、大学在学中に会社設立というのはすごいですよね。それに普通に考えれば自分の作品制作のためにデザイン会社を設立したというのなら想像もつくのですが、、、。
A 実は投資会社でアルバイトをしていたのですが、その中で知り合う企業関係の方には美大生ということで興味を持たれました。「デザインできる?」とか「WEB作れる?」ってよく聞かれたのですが、自分がそれをやるより周りにいる素晴らしい才能を持った人にやってもらったほうがいいなと思いまして、受注はするんですが実際には彼らに制作をお願いし、自分はプロデュースにまわっていました。そういうことがきっかけで4年生の時に自分も就職できるかどうか分からなかったので会社を設立しちゃったんです。(笑)
Q 2009年の秋にNHK教育テレビの「あしたをつかめ」という番組を見ましたよ。とても衝撃的でした。その人が須坂で生まれ育った加藤さんだった。
A 美大生をネットワークして受注制作をしてクライアントからの要望を受け、それに合った才能ある学生にデザインしてもらう。クライアントにとっては安くあがるし、学生の柔軟な発想で思いがけない良いものになる可能性も秘めている。学生にとっては作品を発表できる場でもあるし、実社会でデザインすることの厳しさも学べる。私たちは納期や品質の管理などプロデュースする訳です。
今では学生に限らずフリーのアーティストのネットワークにまで広がっているんですよ。
Q そうか、当時の学生もいまでは立派な社会人ですもんね。
A はい。クライアントからの依頼でアーティストネットワークを使って作品を届けるというのが最初のスタイルでした。クライアントがお客さんということでしたが、今は逆にクライアントにとっては美大生をターゲットにする商品もあるわけで、そういうものを繋ぐこともしています。また、美大生専門の就職情報誌なんかも発行しています。
Q 「ヒト、モノ、コトを繋ぐ」ということが会社案内に書いてありました。実はいま、こうしてインタビューしているのも、須坂の財産である「人、モノ、Koto」を紹介することで須坂のピーアールをしようって企画なんですよ。須坂で生まれ育った加藤さんのような人たちが全国を股にかけて活躍していることも私たち須坂の財産だと思うんです。加藤さんは須坂で生まれ育ったことが今に活きている、そんなことは感じますか?
A 須坂だから、ということは特にいま思いつかないんですが(笑)、都会で育っていたら、今の自分はなかったとは思います。みつばち保育園に通っていましたが、なんか野性的というか、型にはまらない自由な感じはありました。そういう田舎暮らしは影響していると思います。都会は夜の10時にランドセルを背負った子供が塾通いで普通に電車に乗っている。こういうところで自分も子供を育てると考えるとゾッとします。(笑)
そういえば、須坂高校のりんどう祭実行委員会で記録係をしたんです。カメラが好きとかいうわけでもなく、単にそういう係になった。でも、写真を撮ったり、報告書のレイアウトをしたことが面白かったという思い出はあります。その後、美大に進もうって考えるようになりましたから、その経験が影響していたのかもしれません。
Q 最後に、今後の予定や夢があったら教えてください。
A 銀行を作りたい。
Q え? 銀行ですか?
A はい。芸術銀行といえばいいかな。お金を預かって、必要な人に貸すということではなくて、アーティストの作品を預かって、必要な人にそれを貸すってことです。アーティストは作品を作っても、実際問題として保管する場所がなかったりするんですよね。絵画でも彫刻でも大きい作品ってありますから、、、。そういうものを預かるんだけど、預かり料をもらったら倉庫業になっちゃう。(笑)そうでなくて、それを必要な人に貸し出してそちらから倉庫代は負担してもらう、そんな感じです。できたら銀行の支店のように各地にそんなものが作れたらいいなと。
Q なるほど、面白そうですね。
A 先ほどからお話を聞いていると、須坂出身で面白そうな人ってたくさんいるようですね。そういう人たちをネットワークして何かできたらいいですね。僕はそういうことが仕事ですから、そんなことで須坂にも貢献できたら嬉しいです。
昨年の漢字は「絆」でしたが、これからは「繋ぐ」ですかね。少なくとも須坂では「繋ぐ」をキーワードにしたい、そんな気がしてきました。今日はありがとうございました。
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やっていることはバリバリなんだが、本人は物静かで哲学者的な印象を受けた。見た目より数段上の情熱と発想力を持った若者が田舎(須坂)暮らしから生み出された、まさに「宝」であると感じた。これからの更なる活躍と「須坂人ネットワークで面白いこと」に期待したい。
(取材2012.1.20)